クーリング・オフ制度とは、一定の期間内であれば消費者が業者との間で締結した契約を一方的に解除できる権利です。
原則として、契約をした者はお互いに契約を守らなければなりません。この原則は、契約しようとする者がお互いに契約について平等の知識を持ち、かつ、自由意志に基づいて納得のうえで契約をしたことが前提となっています。
しかし、契約自由平等の原則はいかなる場合も守られているとは限りません。消費者が突然訪問してきたセールスマンから巧妙な勧誘に引き込まれたり、契約の即断を迫られてよく考えることもできずに契約をした後に、納得のいかないことに気づくこともあります。
クーリング・オフ制度は、このような契約自由平等の原則が守られないおそれのある取引についての契約を締結したり契約の申し込みをした消費者に対して、冷静に考える期間を与えて、契約の解除や契約の申し込みを撤回したければ、その意志通りにさせて、容易に被害救済を図ることにあります。
契約を守るのが原則ですから、一方的に契約を解除したり、申し込みの撤回ができるのは特別の場合に限られます。それは、@法律に規定がある場合、A業界が自主的に規定している場合、B業者が個別的に契約内容に採り入れている場合です。
いずれの場合も、契約書面にクーリング・オフのことが書かれているのでよく読むことです。
法律に規定のあるクーリング・オフについて注意すべきことは、契約の申し込みや契約を締結した場所が店以外に限られているものとそうでないものがあること、海外先物取引についてはクーリング・オフ期間の起算日が契約締結日の翌日から、そのほかは契約書面を交付された日から数えます。
1996年5月22日の訪問販売法の改正により、マルチ商法のクーリング・オフ期間が14日から20日に延長されました。消費者がわかりにくいマルチ商法を理解するまでには相当の期間を必要としているからです。
取引内容 | 期間 | 適用対象 | |
法 律 に よ る も の |
訪問販売 | 法定の契約書面の交付された日から8日間 | 店舗外での指定商品・権 利・役務の取引、3千円 未満の現金取引を除く |
割賦販売 クレジット契約 |
クーリング・オフ制度の告知の日から8日間 | 店舗外での指定商品のク レジット契約 |
|
マルチ商法 | 法定の契約書面の交付された日から20日間 | すべての商品・権利・役 務 |
|
現物まがい商法 | 法定の契約書面の交付された日から14日間 | 特定商品・施設利用権の 預託取引 |
|
海外先物取引 | 海外先物契約(基本契約)締結日の翌日から 14日間 ※ |
事務所以外での取引で、 指定市場・商品の売買注 文 |
|
宅地建物取引 | クーリング・オフ制度の告知の日から8日間 | 宅地建物取引業者が売り 主である宅地建物の売買 で店舗外での取引 |
|
ゴルフ会員権の募集 | 法定の契約書面の交付された日から8日間 | 金50万円以上のゴルフ 会員権で、オープン前の 新規募集であるとき |
|
投資顧問契約 | 法定の契約書面の交付された日から10日間 | 投資顧問業者(許可業者 )との契約、ただし清算 義務あり |
|
生命保険契約 | 法定の契約書面の交付された日から8日間 | 保険期間が一年以下の契 約を除く |
注)1.起算日はいずれも初日を算入する。
ただし、※印の海外先物取引は、契約日の翌日から起算。
2.「法定の契約書面が交付された日」「クーリング・オフ制度の告知の日」「契約締結日」は
、クーリング・オフの記載がある申込書の控えが手渡された日であるケースが多い。
3.期間内に通知書を発信すれば、到達は期限後でもよい。
4.マルチ商法、現物まがい商法、投資顧問契約、ゴルフ会員権の募集は、営業所で契約した場
合も適用される。
5.訪問販売法の改正により、電話勧誘による契約締結(申し込み)にも8日間のクーリング・
オフができるようになった。