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ASAHI BUSINESS PLAZA 97/06より


米国流通業の現状

近年、米国の流通業界では、多様な消費者ニーズを満たすために様々な流通業態 が誕生しています。
 一方、わが国においては、大店法の見直しが行われ、大型店の出店規制が大幅に緩和されるなど、流通業を取り巻く環境は大きく動き始めてはいるものの、米国に比べて依然遅れを取っていることは否定できません。
 このように、かつてない自由化が進展し始めているわが国流通業界の今後を展望するうえで、米国流通業界の現状をみることは極めて有益であり、ここでは米国の流通諸業態についてご紹介します。

  

エンターテイメント化が進む米国の流通業

米国流通業の移り変わり

 消費者ニーズの変化に伴い米国流通業界は大きな変化を経験しています。

(1) 1980年代 --コスト意識の高まり
 70年代は、住まいの近くですべてのものがそろう『ワンストップショッピング』が主流で したが、80年代に入ると、便利さに加えて安さへの要求が高まってきました。 こうした消費者のコスト意識の高まりを反映し、メンバーシップホールセールクラブに代表される、低価格指向に対応したパワー業態と呼ばれる大規模ディスカウントストアが次々と誕生しました。また、家電やアパレルなどの特定分野に特化し、ナショナルブランド品のディスカウントを売り物にしたスペシャリティーディスカウントストアが登場したのもこの時期です。    
 
(2)1990年代 ----- 大型専門店が台頭
 90年代に入ると、カテゴリーキラーと呼ばれる、新しいコンセプトを取り入れた大型専門店が、新たな時代を築きました。こうした新業態の参入により、『シアーズ』や『Kマート』のようにあらゆる商品の品揃えをするゼネラル業態のなかには、厳しい経営状態となる企業も出てきました。


米国にみられる流通諸業態

 米国では多様な消費者ニーズを満たすために、以下にみるような様々な流通業態が誕生しています。

(1)オフプライスストア:
80年代に流行した流通形態の一つです。デパートが扱っているナショナルブランドやデザイナーズブランドの商品を専門に、デパート価格の30〜70%のディスカウントプライスで販売することで成功をおさめました。
 
(2)アウトレットストア:
メーカーが余剰在庫を処分する目的でスタートさせた直営販売店が、低価格指向の消費者ニーズに合致し拡大したものです。メーカーにとっても自社ブランド商品の需要創出の有効手段となっています。
 
(3)カテゴリーキラー:
『トイザラス』に代表されるカテゴリーキラーは、文字通り一つのカテゴリーに集中し、その分野に関して徹底的に品ぞろえを行い、合わせてメンバーシップホールセールクラブと同様に『売り場=倉庫』という概念を導入したものです。徹底的な安さを追求することで、流通業界の勢力図を一変させるほどの地位を築き上げました。
 
(4)メンバーシップホールセールクラブ
会員制の卸売業で、流通センターを持たず、売り場とウエアハウス(倉庫)を兼ねることで、コストを大幅に削減することに成功しています。サービス内容も最大限に合理化し、包装、接客、広告等は行わず、その分徹底的な安さを追求し、80年代の流通業の革命的存在となりました。当初は法人顧客が主体でしたが、現在では会員の約60%が個人顧客となっています。    


今後の方向性

   

米国流通業の中心パワーセンター

 今日、米国では、これまで述べてきたような商業諸形態が組み合わされたパワーセンターと呼ばれる商業集積の登場が進んでいます。このパワーセンターは、それぞれの特徴を生  かしながら圧倒的な集客力により従来のショッピングセンターからの消費者シフトを実現しています。
  またもう一つの大きな流れは、単に商品を売るだけの流通業から、店舗に娯楽的な要素を取り込んだエンターテイメント化の進展です。そのジャンルの商品を安く売るだけでなく、 マルチメディアやスポーツなどその娯楽性を引き出し、店舗を光、映像、音響などで演出する等の工夫を凝らす企業も登場しています。
 米国の流通業界では、生き残りを賭けた熾烈な競争が展開されていますが、その根底にあるのは消費者の選別にいかに耐えうるかということです。そのために消費者ニーズやライフスタイルの変化に合わせて、流通業界も新しいコンセプトを導入し、日々革新を図っております。


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