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ここでストレートに、JASRACと日本レコード協会それぞれにアンケートを試みた。同時に、レコード会社とレコード・ショップというインターネットにおける音楽配信に密接な関わりをもっている立場の関係者にも、まったく同じ質問を投げかけてみた。いったい問題は何ですか?
Q1
インターネットでの音楽配信における問題点は何でしょうか? なるべく具体的に指摘していただければ幸いです。
A1
日本音楽著作権協会(JASRAC) 広報部
音楽著作権の管理団体としての立場から言えば、まず著作権問題だと思います。インターネットの特徴は、1デジタル化、2ネットワーク化ですが、1については、高品質で大量の音楽を録音することができ、改変も容易、2については、従来のパッケージの流通に比べれば比較にならぬほど、低コストで大量に広範囲に音楽を配信することができる。著作権保護と許諾・微収システムが確立され、適正な利用慣行が形づくられなければ、著作者の経済的および人格的利益が著しく損なわれる危険性をはらんでいます。
著作権法では、今改正における公衆送信権等の創設を待つまでもなく、著作者に「複製権」や、1986年(昭和61年)に世界に先駆けて創設された「有線送信権」などによる保護が与えられていましたが、著作者の経済的利益を護る著作権管理団体としての主要な問題は、インターネットに代表される著作物のデジタル化、ネットワーク化に対して、どのように使用料率・額などを定め、誰に手続きを求めるかにあります。
インターネットを利用した音楽配信は、企業ばかりでなく、個人でも行われるなど、営利目的から趣味の範囲にいたるまで、方法は多岐にわたりますから、利用形態に応じた公正・妥当な料金設定、さらに利用者・権利者双方にとって簡便で効率の良い許諾・微収方法が求められます。しかしながら、現状、ネットワーク事業等事業を始める前に、音楽の著作権料がどの程度になるのかを権利者に相談し、使用料を原価に組み入れて情報料を設定するという当然の手順を欠いて事業を始めるケースが見られます。JASRACにおいては、まだ事業展開が定まらず、正規の使用料として確定することが難しい段階では、保証金を預かり、規定制定後清算する方法をとっています。著作物の使用料は、どのような形態で利用される場合にも著作物としての価値を保証するものでなくてはなりません。
またインターネットにおいては、著作物が国境を越えて流通することから、国際的に整合性のあるルール作りが必要です。
インターネットなどの「オンライン・サービス」に対して、現在、アメリカ、イギリス、オランダの団体が「実験的許諾(experimental license)」を行っているだけで、事業用通信カラオケなどオンライン・サービスの1つの利用形態に対して具体的な規定を設け、許諾・微収を実行したのはJASRACが初めてです。インターネットなど伝送系メディアでの音楽利用へ適用する規定については、現在利用者団体と協議しているところです。
日本レコード協会 広報部
(1)現在のレベル、特に回線の容量からいって、インターネットでは充分にユーザーの要求に応えられる“quality”の音源を配信することはできない。又、“security”にも問題がある。
(2)上記(1)と関連し、音源に係る作家、アーチスト、レコード製作者の権利が確実に保全され得ない。
(3)以上により、現在のインターネットは、“販促ツール”にとどまるのであれば充分利用可能であるが(事実レコード協会は、会員社とリンクした共同ホームページを開設しており、新曲プロモート等を行っている)、商品としての音源を配信するような“事業ツール”ではない。
マスコミが実態以上にあおっている状況であると判断している。
ビクターA&R1 bitwave 佐藤直行
パソコンユーザー>インターネットユーザーであり、インターネットに接続出来る、純粋に音楽の好きなユーザーが少ないこと(タレントのファン、アーティストのファンなどとは別のファクターと思われる)。
CDクオリティのデータをダウンロードするための、エンコード/デコードのインフラ、接続回線のスピードの問題および、それらのフォーマットのスタンダードが出来ていないこと。
バックアップメディア(MD)などが未だ身近かなハードインフラとして整っていない(コンシューマー向けの商品が少ない)こと。
タワーレコード デジビズ事業部 伏谷博之
レコード店でネットを使った音楽配信といえば、ノンパッケージでの音楽の販売とか、ネット上のお店での試聴システムが関わってきますが、正直いってやっとネットで通販がスタートしたうちなんかの商売では、まだまだ距離のある話だったりします。ノンパッケージの音楽販売なんてことになると尚更遠くて、具体的なビジネスの形が見えないので、一般に言われているJASRACがどうした、インフラがどうしたなんていっても、あまり現実味がなかったりもします。
もともと小売りでCD売っている分には、あんまり著作権がとかって関わって来ないですからね。ただ昔、店内のストアプレイに課金されるらしい、みたいな具体的な話があがった時にちょっと待ってよって結構話題になったことがありまして、ネット上にお店を出すという時にふとそんなことを思ったりもしました。
今やCDを試聴して買いたいというのは消費者の常識で、御多分に洩れずネットのレコード屋に充実したデータベースと試聴システムは必須の機能となっています。うちの店なんかも大量の試聴機が売りだったりしますから、ネットでも充実試聴したいのですが、これがなかなか難しい。
現実のお店では試聴機やストアプレイを獲得するために積極的なレコード会社ですが、これが一度ネット上の話となると、こちらから声をかけても反応は鈍いですし、一小売りの僕らが試聴に使う曲の許諾をアーティストやレコード会社にとっていくという作業もなかなか苦しい。
その上にコンバートだなんだって作業してハードディスクにいれたからいくら払わなきゃとかやってたら、これはもうそういう部門設けてやらないといけなくなりますよね。
アメリカではすでにBMI、ASCAPに許諾をとって、ミュージックサーバという試聴システムを構築してる会社があって、うちのUSサイトもそこに接続してます。月々使用料はかかりますけど、レコード屋にはウエルカムなしくみだと思います。日本でもはやくこういうシステムが出てきて欲しいですからね。この問題、やっぱりJASRACなのかな。迅速に的確な判断を希望しています。
Q2
その問題点を解決するためのどのような試みが必要だと思われますか?
A2
日本音楽著作権協会(JASRAC) 広報部
音楽の創作者と利用者は決して対立する関係ではありません。利用者が著作物の価値を正しく認識することによって、創作者と音楽の利用者が共存し、共栄する関係を築くことは不可能ではありません。このことを認識し、誠意をもって、双方の代表団体による使用料規定策定の協議がなされることであると思います。
また国際的なハーモナイザーション(調和)を踏まえたうえでの許諾方法策定が求められています。この点については、JASRACをはじめ世界165団体が加盟する著作権協会国際連合「CISAC(シザック)」において審議されているところです。
日本レコード協会 広報部
とにかく、ネットワーク・インフラがもっと“事業ツール”として利用できるよう充実する必要がある。
ビクターA&R1 bitwave 佐藤直行
コンシューマー向けハードの充実 、パソコン以外(WEB TV、CSデジタル放送のDSTB)のハードの普及。
コンテンツの権利に対しての考えの転換(全体の意識)。
タワーレコード デジビズ事業部 伏谷博之
とにかく音楽配信と一口にいっても様々なビジネスの形態があらわれるんでしょうから、あまりお役所的な判断でのルール決めをしないで、まずは様々な試みを可能にしてくれるような、そんな処置をしていただくとなかなか粋な計らいなのではないでしょうか。
Q3
インターネットに対応した法律改正といえる、新著作権法の『送信可能化権』に対してお聞きします。この法律の施行(98年1月)は、それぞれのお立場に、どのような影響もたらすと思われますか? またどのような現実的な対応を考えていますか?
A3
日本音楽著作権協会(JASRAC) 広報部
送信可能化権の創設により、インターネットに接続されたサーバーにいつ、誰が、どこからアクセスして著作物を利用(送信等)したかを、著作権者が実証する必要はなくなりました。しかし音楽著作権の管理については、実務的に大きな影響は受けません。著作者には複製権、従来の有線送信権による一定の保護が与えられていたからです。
日本レコード協会 広報部
複製(サーバーへの蓄積等)の伴わないネットワーク配信に対してもコントロールが可能となるため、レコード製作者の権利保護には有効な制度であると思われる。
第三者の立場にあるサービス・プロバイダーに権利を許諾して配信サービスを行わせるより、レコード製作者自らがこの 権利に基づいてサービスを提供するシステムを構築すべきと考える。
ビクターA&R1 bitwave 佐藤直行
個人的には法改正に対応した、アーティスト、作家等との共通の認識を持つことが最優先の課題であり、今後の在り方を考え、より良いシステムを構築してゆくべきであると思う。
現状では、施行時の影響はほとんど無いと思う。今後、例えば、ネット上で1曲10万ヒットを越えるような楽曲があり、それが表面化した時点で、対応策を検討するようなことになると思われる。
タワーレコード デジビズ事業部 伏谷博之
自分とこではデータをもてないですね、これは。ノンパッケージ販売とかになると恐ろしいですね、うちみたいに在庫で勝負のところは大変です(笑)。
輸入盤と国内盤ってサーバを分けないと駄目ですかね???
Q4
アメリカにおける積極的なネット配信のシステムに、日本も近づいていくことになるでしょうか?
A4