日本レコード協会とJASRACの動向は?



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日本でインターネットの音楽配信を実施するにあたって、重要な役割を担う存在が、日本レコード協会と日本著作権協会(JASRAC)であることはわかった。しかし、この2団体の動きは、どうも音楽配信を推進しようとする流れに逆らっているように見える。一体どのような対応をしているのだろう。その動向を追ってみた。


TEXT 鷲見和男


日本レコード協会の動向

 日本では来年の新著作権法施行後より、原盤制作者(殆どの場合レコード会社)及び演奏者が録音物の『送信可能化権』を行使出来る事になるのだが、日本レコード協会(RIAJ)では加盟しているレコード・メーカーから発売されている音源(洋楽、邦楽問わず)について有料配信への使用許諾を見合わせる様に、との通達が厳守されている現状は当分変わる気配が無い。

 同協会の方針として、永年にわたり音楽マーケットを支えてきた販売店、流通業者、製造業者への配慮がある為と聞けば、慎重なにならざるを得ないのも理解出来る。しかし、インターネットは目的のコンテンツに到達するまでの過程がTV/ラジオよりも格段に煩雑で、大衆的とは言い難いメディアである。どこででも聴けるような曲を探す為にわざわざアクセスするものではないはずだ。つまり、知名度の低い楽曲にとっては有効なプロモーション手段かも知れないが、いわゆるヒット曲についてはCD販売店に取って替わる様な流通手段になるとは考えにくい。

 一方で、同協会及び加盟各社の殆どが独自ドメインを取得しており、中にはTV/ラジオ/雑誌のフォローに留まらない程に充実したサイトを展開しているところもある。

@勿論それらのサイトでは、各社の新譜、旧譜がストリーム配信されている。特に同協会のサイトにあるQ盤(再販期限を終了した原盤)コーナーは、2050曲もの歌謡曲がワンコーラス聴けるのだ(余談だがイントロ当てクイズにも使える)。

 また、同協会加盟29社のシングル新譜を全て紹介するNTVの番組と連携した「新譜堂」は、TVで見逃した回を観たり、良いと思ったけど名前が判らないアーティストを調べたり出来て、オンデマンドな分TVより実用的にすら思える。新譜を羅列しただけでも楽しめるコンテンツが仕上がるのだから、もっとジャンル毎に絞った内容なら更に重要度を増すのは必至であろう。インターネットを利用している大勢の音楽ファンが、もっと楽しいサイトが増える事を求めている今、1日でも早くストリーム配信の解禁が待たれるところだ。


日本音楽著作権協会の動向

 新著作権法の『送信可能化権』に基づく原盤2次使用料の徴集も、当然、日本音楽著作権協会(JASRAC)が代行する事になるのだが、取り敢えずインターネットでの音楽配信(自動公衆送信)についての著作権使用許諾を行うという声明をJASRACは発表している。しかし、未だに幾ら徴集するのかについての発表はされていない。

 世界各国の著作権団体との調整や文化庁の取り決めを待っているとしながらも、JASRACから利用者関係の各団体に提示された案の1つは、公衆送信用記録媒体(サーバー)に情報を記録(アップロード)してある状態の著作物1曲について月々◯百円、プラス1回の使用につき◯◯%という内容だった。JASRACに納めるべき著作(及び隣接)権使用料の規定が前出の案で決まったとしたら、日本レコード協会に加盟していないレコード会社(所謂インディーズ・レーベル)から許諾が得られたとしても、使用開始日に遡って請求される額は推して量るべしという訳で、個人だから、数十秒だから、無料配信だから、といって迂闊に使用出来ない状況だ。

 また、インターネットでの使用に限った事ではないが、JASRACのサイトには使用規定や料金に関して大変詳細かつ膨大な解説がアーカイブされているのに、肝心の申請用の書式は本部及び全国23箇所の支部に申し込まなければ入手出来ない。また、申請に欠かせない権利者情報を検索するデータベースは¥21,000也(税込み)のCD-ROMを購入するか、本部・支部で検索してもらう事になる。

 因にアメリカの大手著作権管理団体であるASCAPBMIのサイトでは申請書のファイルをダウンロード出来る上、プリントアウトした書式にタイプ打ちしたものをFAXで受け付けてくれる。更に検索エンジンも完備されていて、例えばASCAPのタイトル検索に"rain falls"と入力すればComposer:TOMIIE SATOSHI……と、またBMIのタイトル検索に"rain"と入力すればComposer:LENNON JOHN WINSTON/MC CARTNEY PAUL JAMESといった権利者情報がそれぞれ表示される。

 日本の楽曲の殆どに加え海外の楽曲も一括管理しているJASRACでは、権利者情報をデータベース化するだけでも大変な作業となるのは想像に難く無いが、レコード会社や出版社、アーティストにとって利用者はお客様のはずなのだから、JASRACのサイトに申請書のPDFファイル位あっても良いのではないだろうか。



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